JP2023050298A 审中 离合器控制器
【技術分野】 【0001】 本発明は、クラッチ制御装置に関する。 【背景技術】 【0002】 近年の鞍乗り型車両において、クラッチ装置の断接操作を電気制御により自動で行うようにした自動クラッチシステムが提案されている。例えば特許文献1には、エンジン回転数の変化に応じて、クラッチ接続速度を調整する技術が記載されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】 特開平2-229922号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかし、上記従来の技術では、クラッチ接続速度が変わるだけで、車両発進時のエンジン回転数の設定が変わるわけではないので、運転者の意図した発進特性を得るためにはさらなる改善が必要である。 【0005】 本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、クラッチ装置の断接を制御するクラッチ制御装置において、運転者の意図した発進特性を得やすくすることを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、原動機(13)の動力伝達を断接するクラッチ装置(26)と、前記クラッチ装置(26)を作動させるための駆動力を出力するクラッチアクチュエータ(50)と、前記クラッチアクチュエータ(50)を駆動制御する制御部(40)と、を備えるクラッチ制御装置(40A)において、当該クラッチ制御装置を搭載する車両(1)の発進時、前記原動機(13)の回転数に応じて、前記クラッチ装置(26)を接続する発進制御がなされ、前記発進制御を行う際の前記原動機(13)の発進回転数(Ne2,Ne4)は、走行モードに応じて設定されていることを特徴とする。 この構成によれば、車両の走行モードに応じてクラッチ装置の発進制御を行う際の回転数(発進回転数)が複数設定されているので、運転者が選択した走行モードに応じて異なる特性で車両を発進させることができる。 【0007】 請求項2に記載した発明は、前記車両(1)の走行モードは、ノーマルモードと、スポーツモードと、があり、前記スポーツモードの発進回転数(Ne4)は、前記ノーマルモードの発進回転数(Ne2)よりも高いことを特徴とする。 この構成によれば、スポーツモードでの発進時に、ノーマルモードの発進回転数よりも高回転の発進回転数を用いることで、スポーツモードでの加速要求に応じた発進制御を行うことができる。 【0008】 請求項3に記載した発明は、前記スポーツモードの発進回転数(Ne4)は、前記ノーマルモードの発進回転数(Ne2)に追加回転数(Ne3)を加算した値であり、前記追加回転数(Ne3)は、運転者が操作するスロットルのスロットルオープン速度(Δθth)に応じて決定されることを特徴とする。 この構成によれば、運転者の操作方法(スロットルオープン速度)によって意図的に発進回転数を調整することができる。 【0009】 請求項4に記載した発明は、前記追加回転数(Ne3)は、前記スロットルオープン速度(Δθth)が閾値(a)を越えた場合に、標準値からさらに追加して加算されることを特徴とする。 この構成によれば、走行モードをスポーツモードとした状態でも、スロットルオープン速度が閾値以下である場合(加速要求が低い場合)には、追加回転数が標準値の通常発進とすることが可能となる。このため、走行モードをスポーツモードとしたままで、運転者の操作によってノーマルモード相当の通常発進とスポーツモードの高加速発進とを切り替えることができる。 【0010】 請求項5に記載した発明は、前記追加回転数(Ne3)は、前記スロットルオープン速度(Δθth)に応じて増加することを特徴とする。 この構成によれば、スロットオープン速度に応じて追加回転数ひいては発進回転数が増加するので、運転者の加速要求に応じた発進特性を得ることができる。 【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、クラッチ装置の断接を制御するクラッチ制御装置において、運転者の意図した発進特性を得やすくすることができる。 【図面の簡単な説明】 【0012】 【図1】本実施形態の自動二輪車の右側面図である。 【図2】上記自動二輪車の変速機およびチェンジ機構の断面図である。 【図3】上記自動二輪車の変速システムのブロック図である。 【図4】上記自動二輪車のクラッチ制御モードの遷移を示す説明図である。 【図5】図1のV矢視図であり、クラッチアクチュエータの軸方向視を示す。 【図6】上記クラッチアクチュエータの軸方向に沿う展開断面図である。 【図7】クラッチ装置を作動させるレリーズシャフトの斜視図である。 【図8】図7のVIII-VIII断面図である。 【図9】上記レリーズシャフトの半クラッチ領域での作用を示す図8に相当する断面図であり、(a)はクラッチアクチュエータでの駆動時、(b)はマニュアル介入時をそれぞれ示す。 【図10】上記レリーズシャフトの待機位置での作用を示す図8に相当する断面図であり、(a)はクラッチアクチュエータでの駆動時、(b)はマニュアル介入時をそれぞれ示す。 【図11】上記クラッチアクチュエータを右カバーに取り付けた状態の図6に相当する断面図である。 【図12】クラッチ制御の特性を示すグラフであり、縦軸はクラッチアクチュエータの出力値、横軸をレリーズ機構の作動量をそれぞれ示す。 【図13】図12に相当するグラフであり、実施形態の作用を示す。 【図14】自動二輪車の発進時における車速とエンジン回転数との相関を示すグラフである。 【図15】スロットルオープン速度と追加エンジン回転数との相関を示すグラフである。 【図16】目標エンジン回転数追加制御を含む処理を示すフローチャートである。 【発明を実施するための形態】 【0013】 以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UP、が示されている。 【0014】 <車両全体> 図1に示すように、本実施形態は、鞍乗り型車両の一例としての自動二輪車1に適用されている。自動二輪車1の前輪2は、左右一対のフロントフォーク3の下端部に支持されている。左右フロントフォーク3の上部は、ステアリングステム4を介して、車体フレーム5の前端部のヘッドパイプ6に支持されている。ステアリングステム4のトップブリッジ上には、バータイプの操向ハンドル4aが取り付けられている。 【0015】 車体フレーム5は、ヘッドパイプ6と、ヘッドパイプ6から車幅方向(左右方向)中央を下後方へ延びるメインフレーム7と、メインフレーム7の後端部の下方に設けられるピボットフレーム8と、メインフレーム7およびピボットフレーム8の後方に連なるシートフレーム9と、を備えている。ピボットフレーム8には、スイングアーム11の前端部が揺動可能に枢支されている。スイングアーム11の後端部には、自動二輪車1の後輪12が支持されている。 【0016】 左右メインフレーム7の上方には、燃料タンク18が支持されている。燃料タンク18の後方でシートフレーム9の上方には、前シート19および後シート19aが支持されている。燃料タンク18の後部の左右両側には、車幅方向内側に凹んだニーグリップ部18aが形成されている。左右ニーグリップ部18aは、前シート19に着座した運転者の左右の膝周辺の内側に整合するように形成されている。前シート19の下方の左右両側には、運転者が足首から先の足部を載せるステップ18bが支持されている。 【0017】 メインフレーム7の下方には、自動二輪車1の原動機を含むパワーユニットPUが懸架されている。パワーユニットPUは、その前側に位置するエンジン(内燃機関、原動機)13と、後側に位置する変速機21と、を一体に有している。エンジン13は、例えばクランクシャフト14の回転軸を左右方向(車幅方向)に沿わせた複数気筒エンジンである。 【0018】 エンジン13は、クランクケース15の前部上方にシリンダ16を起立させている。クランクケース15の後部は、変速機21を収容する変速機ケース17とされている。クランクケース15の右側部には、変速機ケース17の右側部に渡る右カバー17aが取り付けられている。右カバー17aは、クラッチ装置26を覆うクラッチカバーでもある。パワーユニットPUは、後輪12と例えばチェーン式伝動機構(不図示)を介して連係されている。 【0019】 <変速機> 図2を併せて参照し、変速機21は、メインシャフト22およびカウンタシャフト23ならびに両シャフト22,23に跨る変速ギヤ群24を有する有段式のトランスミッションである。カウンタシャフト23は変速機21ひいてはパワーユニットPUの出力軸を構成している。カウンタシャフト23の左端部は、変速機ケース17の後部左側に突出し、前記チェーン式伝動機構を介して後輪12に連結されている。 【0020】 変速機21のメインシャフト22及びカウンタシャフト23は、クランクシャフト14の後方に配置されている。メインシャフト22の右端部には、クラッチ装置26が同軸配置されている。クラッチ装置26は、エンジン13のクランクシャフト14と変速機21のメインシャフト22との間の動力伝達を断接させる。クラッチ装置26は、乗員によるクラッチ操作子の操作、および後に詳述するクラッチアクチュエータ50の作動、の少なくとも一方により断接作動する。例えば、前記クラッチ操作子はクラッチレバー4bである。 【0021】 クラッチ装置26は、例えば湿式多板クラッチであり、いわゆるノーマルクローズクラッチである。クランクシャフト14の回転動力は、クラッチ装置26を介してメインシャフト22に伝達され、メインシャフト22から変速ギヤ群24の任意のギヤ対を介してカウンタシャフト23に伝達される。カウンタシャフト23におけるクランクケース15の後部左側に突出した左端部には、前記チェーン式伝動機構のドライブスプロケット27が取り付けられている。 【0022】 変速機ケース17内で変速機21の近傍には、変速ギヤ群24のギヤ対を切り替えるチェンジ機構25が収容されている。チェンジ機構25は、両シャフト22,23と平行な中空円筒状のシフトドラム32の回転により、その外周に形成されたリード溝のパターンに応じて複数のシフトフォーク32aを作動させ、変速ギヤ群24における両シャフト22,23間の動力伝達に用いるギヤ対を切り替える。 【0023】 ここで、自動二輪車1は、変速機21の変速操作(シフトペダル(不図示)の足操作)のみを運転者が行い、クラッチ装置26の断接操作は前記シフトペダルの操作に応じて電気制御により自動で行うようにした、いわゆるセミオートマチックの変速システム(自動クラッチ式変速システム)を採用している。 【0024】 <変速システム> 図3に示すように、上記変速システム30は、クラッチアクチュエータ50、ECU40(Electronic Control Unit、制御部)、各種センサ41a~41f、各種装置47,48,50を備えている。 ECU40は、車体の挙動を検知する加速度センサ41a、シフトドラム32の回転角から変速段を検知するギヤポジションセンサ41b、およびチェンジ機構25のシフトスピンドル31(図2参照)に入力された操作トルクを検知するシフト荷重センサ41c(例えばトルクセンサ)、スロットル開度を検知するスロットル開度センサ41d、車速を検知する車速センサ41e、エンジン回転数を検知するエンジン回転数センサ41f、等からの各種の車両状態の検出情報に基づいて、点火装置47および燃料噴射装置48を作動制御するとともに、クラッチアクチュエータ50を作動制御する。車速センサ41eは、車輪速センサでもよく、パワーユニットPUの出力軸の回転速度センサでもよい。 【0025】 自動二輪車1は、スロットルボディ等のエンジン補機と、運転者が操作するスロットルグリップ等の操作子と、を電気的に連係させるバイワイヤ式のエンジン制御システム(スロットルバイワイヤ)を構成している。 【0026】 ここで、自動二輪車1は、ABS(Anti-lock Brake System)およびTCS(Traction Control System)を備えている。ABS(アンチロックブレーキシステム)は、車両制動時における前後車輪速センサ(不図示)の出力を相互に比較し、前後輪2,12のスリップ率が予め定めた閾値以上となった際に、前後輪ブレーキ(不図示)に供給するブレーキ液圧を制御する。TCS(トラクションコントロールシステム)は、車両加速時における前後車輪速センサ(不図示)の出力を相互に比較し、エンジン13の駆動力による後輪12の空転を検知した際に、エンジン補機を制御して過剰な駆動力を抑える。ABSおよびTCSの何れも、前後輪2,12のスリップ率が予め定めた閾値以上となった際に制御を介入させる。車輪速センサは、車速センサ41eに含まれてもよい。 【0027】 図5、図6を併せて参照し、クラッチアクチュエータ50は、クラッチ装置26を断接するために、レリーズシャフト53に付与する作動トルクを制御する。クラッチアクチュエータ50は、駆動源としての電気モータ52(以下、単にモータ52という。)と、モータ52の駆動力をレリーズシャフト53に伝達する減速機構51と、を備えている。減速機構51は、第一リダクション軸57および第二リダクション軸58を備え、これら各軸57,58には、回転角度を検出する第一回転角度センサ57dおよび第二回転角度センサ58dが設けられている。 【0028】 ECU40は、予め設定された演算プログラムに基づいて、クラッチ装置26を断接するためにモータ52に供給する電流値を演算する。モータ52への供給電流は、モータ52に出力させるトルクとの相関から求められる。モータ52の目標トルクは、レリーズシャフト53に付与する作動トルク(後述するレリーズシャフトトルク)に比例する。モータ52に供給する電流値は、ECU40に含む電流センサ40bで検出される。この検出値の変化に応じて、クラッチアクチュエータ50が作動制御される。クラッチアクチュエータ50については後に詳述する。 【0029】 <クラッチ装置> 図2、図11に示すように、実施形態のクラッチ装置26は、複数のクラッチ板35を軸方向で積層した多板クラッチであり、右カバー17a内の油室に配置された湿式クラッチである。クラッチ装置26は、クランクシャフト14から回転動力が常時伝達されて駆動するクラッチアウタ33と、クラッチアウタ33内に配置されてメインシャフト22に一体回転可能に支持されるクラッチセンタ34と、クラッチアウタ33及びクラッチセンタ34の間に積層されてこれらを摩擦係合させる複数のクラッチ板35と、を備えている。 【0030】 積層されたクラッチ板35の右方(車幅方向外側)には、クラッチ板35と略同径のプレッシャープレート36が配置されている。プレッシャープレート36は、クラッチスプリング37の弾発荷重を受けて左方に付勢され、積層されたクラッチ板35同士を圧接(摩擦係合)させる。これにより、クラッチ装置26は、動力伝達可能な接続状態となる。クラッチ装置26は、外部からの入力のない通常時には接続状態となるノーマルクローズクラッチである。 【0031】 前記圧接(摩擦係合)の解除は、右カバー17a内側のレリーズ機構38の作動によりなされる。レリーズ機構38の作動は、乗員によるクラッチレバー4bの操作、およびクラッチアクチュエータ50によるトルクの付与、の少なくとも一方によりなされる。 【0032】 <レリーズ機構> 図2、図11に示すように、レリーズ機構38は、メインシャフト22の右側部内に軸方向で往復動可能に保持されたリフターシャフト39と、リフターシャフト39と軸方向を直交させて配置され、右カバー17aの外側部に軸心回りに回動可能に保持されたレリーズシャフト53と、を備えている。図中線C3は上下方向に延びるレリーズシャフト53の中心軸線を示す。レリーズシャフト53は、メインシャフト22の軸方向視(車両側面視)で、垂直方向に対して上側ほど後側に位置するように軸方向を後傾させている(図1参照)。レリーズシャフト53の上部は、右カバー17aの外側に突出し、このレリーズシャフト53の上部に、従動クラッチレバー54が一体回転可能に取り付けられている。従動クラッチレバー54は、クラッチレバー4bと操作ケーブル54cを介して連結されている。 【0033】 レリーズシャフト53における右カバー17aの内側に位置する下部には、偏心カム部38aが備えられている。偏心カム部38aは、リフターシャフト39の右端部に係合している。レリーズシャフト53は、軸心回りに回動することで、偏心カム部38aの作用によりリフターシャフト39を右方に移動させる。リフターシャフト39は、クラッチ装置26のプレッシャープレート36と一体的に往復動可能に構成されている。したがって、リフターシャフト39が右方へ移動すると、プレッシャープレート36がクラッチスプリング37の付勢力に抗して右方に移動(リフト)し、積層されたクラッチ板35同士の摩擦係合を解除させる。これにより、ノーマルクローズのクラッチ装置26が、動力伝達不能な切断状態となる。 【0034】 なお、レリーズ機構38は、偏心カム機構に限らず、ラック&ピニオンや送りネジ等を備えるものでもよい。クラッチレバー4bと従動クラッチレバー54とを連結する機構は、操作ケーブル54cに限らず、ロッドやリンク等を備えるものでもよい。 【0035】 <クラッチ制御モード> 図4に示すように、本実施形態のクラッチ制御装置40Aは、三種のクラッチ制御モードを有している。クラッチ制御モードは、自動制御を行うオートモードM1、手動操作を行うマニュアルモードM2、および一時的な手動操作を行うマニュアル介入モードM3、の三種のモード間で、クラッチ制御モード切替スイッチ49およびクラッチレバー4b(何れも図3参照)の操作に応じて適宜遷移する。なお、マニュアルモードM2およびマニュアル介入モードM3を含む対象をマニュアル系M2Aという。 【0036】 オートモードM1は、自動発進·変速制御により走行状態に適したクラッチ容量を演算してクラッチ装置26を制御するモードである。マニュアルモードM2は、乗員によるクラッチ操作指示に応じてクラッチ容量を演算してクラッチ装置26を制御するモードである。マニュアル介入モードM3は、オートモードM1中に乗員からのクラッチ操作指示を受け付け、クラッチ操作指示からクラッチ容量を演算してクラッチ装置26を制御する一時的なマニュアル操作モードである。なお、マニュアル介入モードM3中に、例えば乗員がクラッチレバー4bの操作をやめた状態(完全にリリースした状態)が規定時間続くと、オートモードM1に戻るよう設定されてもよい。 【0037】 例えば、クラッチ制御装置40Aは、システム起動時には、オートモードM1でクラッチオンの状態(接続状態)から制御を始める。また、クラッチ制御装置40Aは、エンジン13停止時(システムオフ時)には、オートモードM1でクラッチオンに戻るように設定されている。ノーマルクローズのクラッチ装置26において、クラッチオン時には、クラッチアクチュエータ50のモータ52への電力供給が無くて済む。一方、クラッチ装置26のクラッチオフ状態(切断状態)には、モータ52への電力供給を保持する。 【0038】 オートモードM1は、クラッチ制御を自動で行うことが基本であり、レバー操作レスで自動二輪車1を走行可能とする。オートモードM1では、スロットル開度、エンジン回転数、車速およびシフトセンサ出力等に基づき、クラッチ容量をコントロールしている。これにより、自動二輪車1をスロットル操作のみでエンスト(エンジンストップまたはエンジンストール(engine stall)の意)することなく発進可能であり、かつシフト操作のみで変速可能である。また、オートモードM1では、乗員がクラッチレバー4bを握ることで、マニュアル介入モードM3に切り替わり、クラッチ装置26を任意に切ることが可能である。 【0039】 一方、マニュアルモードM2では、乗員によるレバー操作により、クラッチ容量をコントロール可能とする(すなわちクラッチ装置26を断接可能とする)。オートモードM1とマニュアルモードM2とは、例えば自動二輪車1の停車中かつ変速機21のニュートラル中に、クラッチ制御モード切替スイッチ49(図3参照)を操作することで、相互に切り替え可能である。なお、クラッチ制御装置40Aは、マニュアル系M2A(マニュアルモードM2又はマニュアル介入モードM3)への遷移時にマニュアル状態であることを示すインジケータを備えてもよい。 【0040】 マニュアルモードM2は、クラッチ制御を手動で行うことが基本であり、クラッチレバー4bの作動角(ひいてはレリーズシャフト53の作動角)に応じてクラッチ容量を制御可能である。これにより、乗員の意思のままにクラッチ装置26の断接をコントロール可能である。なお、マニュアルモードM2であっても、クラッチ操作なしにシフト操作がされたときは、クラッチ制御が自動で介入可能である。以下、レリーズシャフト53の作動角をレリーズシャフト作動角という。 【0041】 オートモードM1では、クラッチアクチュエータ50により自動でクラッチ装置26の断接が行われるが、クラッチレバー4bに対するマニュアルクラッチ操作が行われることで、クラッチ装置26の自動制御に一時的に手動操作を介入させることが可能である(マニュアル介入モードM3)。 【0042】 図2を併せて参照し、クラッチレバー4bは、クラッチ装置26のレリーズシャフト53に取り付けられた従動クラッチレバー54に対し、操作ケーブル54cを介して連結されている。従動クラッチレバー54は、レリーズシャフト53における右カバー17aの上部に突出した上端部に、一体回転可能に取り付けられている。 【0043】 また、例えば操向ハンドル4aに取り付けられたハンドルスイッチには、前記クラッチ制御モード切替スイッチ49(図3参照)が設けられている。これにより、通常の運転時に乗員が容易にクラッチ制御モードを切り替えることが可能である。 【0044】 <クラッチアクチュエータ> 図1に示すように、クランクケース15右側の右カバー17aの後上部には、クラッチアクチュエータ50が取り付けられている。 図5、図6を併せて参照し、クラッチアクチュエータ50は、モータ52と、モータ52の駆動力をレリーズシャフト53に伝達する減速機構51と、を備えている。 モータ52は、例えばDCモータであり、例えばレリーズシャフト53と軸方向を平行にして配置されている。モータ52は、駆動軸55を上方に突出させるように配置されている。 【0045】 実施形態では、単一のクラッチアクチュエータ50に対し、複数(二つ)のモータ52を備えている。以下、クラッチアクチュエータ50の車両前方側に位置するモータ52を第一モータ521、第一モータ521に対して車両後方側かつ車幅方向内側に位置するモータ52を第二モータ522、と称する。図中線C01,C02はそれぞれ各モータ521,522の中心軸線(駆動軸線)を示す。説明都合上、両モータ521,522をモータ52と総称することがある。また、両軸線C01,C02を軸線C0と総称することがある。 【0046】 減速機構51は、モータ52から出力される回転動力を減速してレリーズシャフト53に伝達する。減速機構51は、例えばレリーズシャフト53と軸方向を平行にしたギヤ列を備えている。減速機構51は、各モータ521,522の駆動軸55に一体に設けられる駆動ギヤ55aと、各駆動ギヤ55aが噛み合う第一リダクションギヤ57aと、第一リダクションギヤ57aと同軸の第一小径ギヤ57bと、第一小径ギヤ57bが噛み合う第二リダクションギヤ58aと、第二リダクションギヤ58aと同軸の第二小径ギヤ58bと、第二小径ギヤ58bが噛み合う被動ギヤ63aと、各ギヤを収容するギヤケース59と、を備えている。 【0047】 第一リダクションギヤ57aおよび第一小径ギヤ57bは、第一支持軸57cに一体回転可能に支持され、これらが第一リダクション軸57を構成している。第二リダクションギヤ58aおよび第二小径ギヤ58bは、第二支持軸58cに一体回転可能に支持され、これらが第二リダクション軸58を構成している。第一支持軸57cおよび第二支持軸58cは、それぞれギヤケース59に回転可能に支持されている。第二リダクションギヤ58aは、第二支持軸58c中心の扇形ギヤであり、第二支持軸58cの前方かつ車幅方向外側に広がるように設けられている。図中線C1は第一リダクション軸57の中心軸線、線C2は第二リダクション軸58の中心軸線をそれぞれ示す。 【0048】 被動ギヤ63aは、レリーズシャフト53に一体回転可能に設けられている。被動ギヤ63aは、レリーズシャフト53中心の扇形ギヤであり、レリーズシャフト53の前方に広がるように設けられている。減速機構51における下流側のギヤは回転角度が小さく、第二リダクションギヤ58aおよび被動ギヤ63aを回転角度が小さい扇形ギヤとすることが可能である。 【0049】 その結果、減速機構51ひいてはクラッチアクチュエータ50の小型化が可能となる。すなわち、減速比を稼ぐために大径の減速ギヤを設ける場合にも、この減速ギヤの噛み合い範囲以外を切り欠いて扇形とすることで、特に減速機構51の車幅方向外側への張り出しを抑えることが可能であり、かつ減速機構51の軽量化を図ることが可能である。 【0050】 係る構成により、モータ52とレリーズシャフト53とは、減速機構51を介して常時連動可能である。これにより、クラッチアクチュエータ50で直接的にクラッチ装置26を断接させるシステムが構成されている。 【0051】 各ギヤは、軸方向厚さを抑えた偏平の平歯車であり、ギヤケース59も、軸方向の厚さを抑えた偏平状に形成されている。これにより、減速機構51が車両側面視で目立ち難くなる。ギヤケース59の上面側には、第一リダクション軸57および第二リダクション軸58の各々の一端部に連結されてこれらの回転角度を検出する第一回転角度センサ57dおよび第二回転角度センサ58dが設けられる。 【0052】 モータ52は、ギヤケース59の前部から下方に突出するように配置される。これにより、モータ52が右カバー17aにおけるクラッチ装置26を覆う膨出部17bを前方に避けて配置可能となり、クラッチアクチュエータ50の車幅方向外側への張り出しが抑えられる。 【0053】 図1、図11を参照し、右カバー17aは、車両側面視でクラッチ装置26と同軸の円形の範囲を、車幅方向外側に膨出した膨出部17bとしている。膨出部17bにおける後上方に臨む部位には、残余の部位に対して外側面を車幅方向内側に変化させたカバー凹部17cが形成されている。カバー凹部17cの下端部は、膨出部17bの外側面を段差状に変化させる段差部17dとされる。段差部17dには、レリーズシャフト53の上部が斜め上後方に突出している。 【0054】 モータ52の駆動力は、駆動ギヤ55aと第一リダクションギヤ57aとの間で減速され、かつ第一小径ギヤ57bと第二リダクションギヤ58aとの間で減速され、さらに第二小径ギヤ58bと被動ギヤ63aとの間で減速されて、レリーズシャフト53に伝達される。 【0055】 <レリーズシャフト> 図6~図8に示すように、レリーズシャフト53は、クラッチアクチュエータ50からの入力と乗員の操作による入力とを個別に受けて回動可能とするために、複数の要素に分割されている。 レリーズシャフト53は、上部を構成する上部レリーズシャフト61と、下部を構成する下部レリーズシャフト62と、上部レリーズシャフト61の下端部と下部レリーズシャフト62の上端部とに跨って配置される中間レリーズシャフト63と、を備えている。 【0056】 上部レリーズシャフト61は、円柱状をなし、ギヤケース59の上ボス部59bに回転可能に支持されている。上部レリーズシャフト61は、上端部がギヤケース59の外側に突出し、この上端部に従動クラッチレバー54が一体回転可能に支持されている。従動クラッチレバー54には、クラッチレバー4bの操作による回動(クラッチ切断方向の回動)とは逆方向の付勢力を従動クラッチレバー54に付与するリターンスプリング54sが取り付けられている。 【0057】 下部レリーズシャフト62は、円柱状をなし、下部が右カバー17aの内側に回転可能に支持されている。下部レリーズシャフト62におけるギヤケース59内に臨む下部には、レリーズ機構38の偏心カム部38aが形成されている。下部レリーズシャフト62の下端部には、クラッチ切断方向の回動とは逆方向の付勢力を下部レリーズシャフト62に付与する下部リターンスプリング62sが取り付けられている。 【0058】 上部レリーズシャフト61の下端部には、断面扇形をなして軸方向に延びる手動操作側カム61bが設けられている。 下部レリーズシャフト62の上端部には、周方向又は軸方向で手動操作側カム61bを避けた範囲で、断面扇形をなして軸方向に延びるクラッチ側カム62bが設けられている。 【0059】 上部レリーズシャフト61の下端部(手動操作側カム61b)と下部レリーズシャフト62の上端部(クラッチ側カム62b)とは、互いに周方向で避けつつ軸方向位置をラップさせている(又は互いに軸方向で避けつつ周方向位置をラップさせている)。これにより、手動操作側カム61bの周方向一側面61b1でクラッチ側カム62bの周方向他側面62b2を押圧し、下部レリーズシャフト62を回転させることが可能である(図9(b)、図10(b)参照)。 【0060】 手動操作側カム61bの周方向他側面61b2とクラッチ側カム62bの周方向一側面62b1とは、周方向又は軸方向で互いに離間している。これにより、クラッチ側カム62bにクラッチアクチュエータ50からの入力があった場合には、上部レリーズシャフト61から独立して下部レリーズシャフト62が回転可能である(図9(a)、図10(a)参照)。 【0061】 中間レリーズシャフト63は、上部レリーズシャフト61の下端部と下部レリーズシャフト62の上端部との係合部分(上下シャフト係合部)を挿通可能な円筒状をなしている。中間レリーズシャフト63には、被動ギヤ63aが一体回転可能に支持されている。 中間レリーズシャフト63には、断面扇形をなして軸方向に延びる制御操作側カム63bが設けられている。 【0062】 中間レリーズシャフト63の制御操作側カム63bと下部レリーズシャフト62のクラッチ側カム62bとは、互いに周方向で避けつつ軸方向位置をラップさせている(又は互いに軸方向で避けつつ周方向位置をラップさせている)。これにより、制御操作側カム63bの周方向一側面63b1でクラッチ側カム62bの周方向他側面62b2を押圧し、下部レリーズシャフト62を回転させることが可能である。 【0063】 また、制御操作側カム63bは、上部レリーズシャフト61の手動操作側カム61bを軸方向又は径方向で避けて配置されている。これにより、クラッチアクチュエータ50からの入力をクラッチ側カム62bに伝達する際、上部レリーズシャフト61から独立して下部レリーズシャフト62を回転可能である。また、手動操作があった場合には、上部レリーズシャフト61を制御側の中間レリーズシャフト63から独立して回転可能である。 【0064】 制御操作側カム63bの周方向他側面63b2とクラッチ側カム62bの周方向一側面62b1とは、周方向で互いに離間している。これにより、クラッチ側カム62bに手動操作側カム63bからの入力があった場合には、中間レリーズシャフト63から独立して下部レリーズシャフト62が回転可能である。 【0065】 図11を参照し、クラッチアクチュエータ50は、上部レリーズシャフト61および中間レリーズシャフト63を、ギヤケース59で回動可能に保持している。クラッチアクチュエータ50は、上部レリーズシャフト61および中間レリーズシャフト63を含んで一体のアクチュエータユニット50Aを構成している。 【0066】 下部レリーズシャフト62は、右カバー17aに回転可能に保持されている。右カバー17aの前記カバー凹部17cの段差部17dには、下部レリーズシャフト62の上端部が突出する開口部17eが設けられるとともに、ギヤケース59の締結部17fが設けられる。ギヤケース59における前記カバー凹部17cの段差部17dとの対向部分には、下部レリーズシャフト62の上端部をギヤケース59内に臨ませる開口部59cが設けられる。 【0067】 係る構成において、アクチュエータユニット50Aを右カバー17aに取り付けると、上部レリーズシャフト61、中間レリーズシャフト63および下部レリーズシャフト62が相互に連結されて、直線状のレリーズシャフト53を構成する。 【0068】 実施形態のパワーユニットPUは、クラッチ装置26の断接操作を電気制御で行わずに運転者の操作で行うマニュアルクラッチ式のパワーユニットに対し、右カバー17aおよびレリーズシャフト53を交換し、アクチュエータユニット50Aを後付けすることで構成可能である。このため、機種違いのパワーユニットに対しても、アクチュエータユニット50Aを取り付け可能であり、多機種間でアクチュエータユニット50Aを共有して容易にセミオートマチックの変速システム(自動クラッチ式変速システム)を構成可能である。 【0069】 <クラッチ制御> 次に、実施形態のクラッチ制御について、図12のグラフを参照して説明する。図12のグラフは、前記オートモードM1におけるクラッチ特性をイメージしている。図12のグラフにおいて、縦軸はレリーズシャフト53に付与されるトルク(Nm)およびクラッチ容量(%)、横軸はレリーズシャフト53の作動角(deg)をそれぞれ示している。 【0070】 レリーズシャフト53に発生するトルクは、モータ52への供給電流とモータ52が発生するトルクとの相関から、モータ52への供給電流値に基づき得られるトルク値に、減速機構51の減速比を乗じて算出されるトルク値に相当する。以下、レリーズシャフト53のトルクをレリーズシャフトトルクという。レリーズシャフト作動角とレリーズシャフトトルクとの相関をグラフ中線L11で示す。レリーズシャフト作動角とクラッチ容量との相関をグラフ中線L12で示す。線L11は、マニュアル操作が介入しない状態でクラッチ装置26を断接する際のクラッチアクチュエータ50の出力値(基準出力値)を示す線でもある。 【0071】 ノーマルクローズクラッチのオートモードM1において、レリーズシャフトトルク(モータ出力)が「0」のとき、クラッチ装置26に対する操作入力(切断側への入力)はなく、クラッチ容量は100%となる。すなわち、クラッチ装置26は接続状態を維持する。この状態は、図12の横軸の領域Aに相当する。領域Aは、従動クラッチレバー54の遊び領域である。領域Aでは、モータ出力がなく、レリーズシャフトトルクは「0」で推移する。領域Aでは、クラッチ装置26の作動がなく、クラッチ容量は100%で推移する。 【0072】 図8を併せて参照し、領域Aでは、レリーズシャフト53の手動操作側カム61bの周方向一側面61b1がクラッチ側カム62bの周方向他側面62b2を押圧せず、リターンスプリング54sの付勢力によりクラッチ側カム62bから離間している(図8中鎖線で示す)。領域Aでは、従動クラッチレバー54は、手動操作側カム61bがクラッチ側カム62bに対して図中角度A1だけ接近離反可能な遊び状態にある。例えば、領域Aでは、制御操作側カム63bの周方向一側面63b1がクラッチ側カム62bの周方向他側面62b2に当接した状態にある。 【0073】 図12を参照し、レリーズシャフト作動角が増加して遊び領域Aを過ぎると、レリーズシャフト作動角が半クラッチ領域Bに移行する。 【0074】 図9(a)を併せて参照し、半クラッチ領域Bでは、制御操作側カム63bがクラッチ側カム62bを押圧して下部レリーズシャフト62を回転させる。レリーズシャフトトルクが増加すると、レリーズ機構38がクラッチ装置26をリフト作動させ、クラッチ容量を減少させる。すなわち、クラッチ装置26は、一部の動力伝達を可能とした半クラッチ状態となる。図12中符号SPは、遊び領域Aから半クラッチ領域Bに切り替わる作動の開始位置(作動開始位置)を示す。半クラッチ領域Bにおいてマニュアル操作が介入すると、手動操作側カム61bがクラッチ側カム62bに当接し、制御操作側カム63bと協働して下部レリーズシャフト62を回転させる(図9(b)参照)。 【0075】 レリーズシャフト作動角が、半クラッチ領域Bの終点であるタッチポイントTPを過ぎると、レリーズシャフトトルクの増加は、領域Bよりも緩やかになる。レリーズシャフト作動角におけるタッチポイントTP以降の領域は、例えば、クラッチ容量が「0」相当のまま推移するクラッチ切断領域Cとなる。クラッチ切断領域Cは、例えば、レリーズシャフト53等が機械的な作動限界位置まで作動するための作動余裕領域である。クラッチ切断領域Cでは、レリーズシャフトトルクが微増する。この増加分は、クラッチ装置26のリフト部品の移動に伴うクラッチスプリング荷重の増加分に相当する。図12中符号EPは、クラッチ切断領域Cの終点であるフルリフト位置を示す。 【0076】 例えば、クラッチ切断領域Cの中間には、待機位置DPが設定される。待機位置DPでは、クラッチ装置26が接続を開始するタッチポイントTPよりも若干高いレリーズシャフトトルクが付与される。タッチポイントTPでは、作動誤差により若干のトルク伝達が生じることがあるが、待機位置DPまでレリーズシャフトトルクを付与することで、クラッチ装置26のトルク伝達は完全に遮断される。また、待機位置DPでは、フルリフト位置EPに対して若干低いレリーズシャフトトルクが付与されることで、クラッチ装置26の無効詰めを行うことが可能となる。すなわち、待機位置DPでは、クラッチ装置26における各部のガタや作動反力のキャンセル等が可能となり、クラッチ装置26の接続時の作動応答性を高めることができる。 【0077】 なお、クラッチ装置26が接続状態から切断側へ作動する際、レリーズシャフトトルクが立ち上がるポイント(半クラッチ領域Bの始点)が作動開始位置SPであり、クラッチ装置26が完全に切れるポイント(半クラッチ領域Bの終点)がタッチポイントTPである。 逆に、クラッチ装置26が切断状態から接続側へ作動する際、クラッチ装置26が接続し始めるポイントがタッチポイントTPであり、クラッチ装置26が完全に接続するポイントが作動開始位置SPである。 【0078】 図13を参照し、半クラッチ領域Bにおいて、モータ52の駆動は、リフト荷重に基づき制御される。 係る制御では、まず、クラッチスプリング37の弾発力に基づき、予めクラッチスプリング荷重を設定する。次に、レリーズシャフトトルクに応じて、クラッチ装置26に作用するリフト荷重(クラッチスプリング荷重に抗する操作荷重)を推定する。そして、クラッチスプリング荷重からリフト荷重を減じた荷重を、実際にクラッチ装置26に作用させるクラッチ押付荷重とする。 【0079】 クラッチ容量は、「クラッチ押付荷重/クラッチスプリング荷重」で求められる。クラッチ容量が目標値となるように、モータ52への供給電力を制御し、レリーズシャフトトルクひいてはリフト荷重を制御する。前記作動開始位置SPおよびタッチポイントTPの各々におけるモータ電流値およびレバー作動角は、予め既定値に設定するか、あるいは後述するように、自動二輪車1の電源オン時またはオフ時等に学習制御によって設定する。 【0080】 センシング構成の一例として、モータ制御装置(ECU40)内に電流センサ40bを設け、この検出値をモータトルクに換算し、さらにレリーズシャフトトルク(クラッチ操作トルク)に換算することが挙げられる。 【0081】 図13に示すように、半クラッチ領域Bにおいて、クラッチレバー4bの操作(マニュアル操作)の介入があると、予め設定したレリーズシャフトトルクの相関線L11に対し、レリーズシャフトトルクの実測値が減少する(図中F部参照)。このとき、レリーズシャフトトルクの減少量が予め定めた閾値d1を越えると、マニュアル操作の介入があったものと判定し、予め定めたマニュアル操作介入制御に移行する。 【0082】 マニュアル操作介入制御では、例えばマニュアル操作介入を検知してからレリーズシャフト作動角の増加分が予め定めた角度以上となるまで、レリーズシャフトトルクが閾値d1だけ減少した後のトルクd2を維持するように、モータ52をフィードバック制御する。このときの電流制御中は、タッチポイントTP以降では角度に応じた電流制限を設けており、途中でモータ出力はほぼ0となる。その時の負荷が十分に低いので、マニュアル介入したと判断する。これにより、クラッチレバー4bの操作後に急にモータ52からのトルクが無くなることによる違和感を抑止することができる。レリーズシャフト作動角の増加分が規定角度以上となった後は、徐々にレリーズシャフトトルクを減少させることで(図中G部参照)、前記違和感を抑えつつモータ52を駆動し続けることによる電力消費を抑えることができる。 【0083】 クラッチ切断領域Cにおいて、モータ52の駆動は、レバー位置(角度)に基づき制御される。 前述のように、クラッチ切断領域Cでは、クラッチ装置26のリフトに伴うレリーズシャフトトルクの増加が少ない。このため、クラッチ切断領域Cでは、レリーズシャフト作動角に基づき、モータ52への供給電力を制御する。これにより、クラッチ装置26が接続を開始するタッチポイントTP以降において、クラッチ装置26の切れ量をより細かく制御することが可能となる。 【0084】 センシング構成の一例として、第一リダクション軸57および第二リダクション軸58にそれぞれ第一回転角度センサ57dおよび第二回転角度センサ58dを設け、これらの検出値をレリーズシャフト作動角(クラッチ操作角)に換算することが挙げられる。第一回転角度センサ57dおよび第二回転角度センサ58dは、フェール用に一対設けているが、これらの何れか一方のみとしてもよい。 【0085】 図13に示すように、クラッチ切断領域Cにおいて、クラッチレバー4bの操作(マニュアル操作)の介入があると、予め設定したレリーズシャフトトルクの相関線L11に対し、レリーズシャフトトルクの実測値が減少する(図中H部参照)。 【0086】 図10(a)を併せて参照し、例えば、オートモードM1において、制御操作側カム63bがクラッチ側カム62bに付与するトルクは、待機位置DPに至るまでのトルクを上限とされる。クラッチ側カム62bが待機位置DPを越えてフルリフト位置EPに至るまでのトルクは、クラッチレバー4bを握り込むマニュアル操作が介入し、待機位置DPを越えるだけのトルクが手動操作側カム61bからクラッチ側カム62bに付与された場合である(図10(b)参照)。このとき、制御操作側カム63bはクラッチ側カム62bから離間し、モータ出力は実質0となる。 【0087】 待機位置DPに至る手前であっても、レリーズシャフト作動角がタッチポイントTPを越えたクラッチ切断領域Cにあると、マニュアル操作の介入によって、レリーズシャフトトルクの実測値は実質0となる。したがって、クラッチ切断領域Cにおいて、レリーズシャフトトルクの実測値が実質0となる範囲に変化した場合には、マニュアル操作の介入があったものと判定し、予め定めたマニュアル操作介入制御に移行する。 【0088】 マニュアル操作介入制御では、例えばマニュアル操作介入を検知してからレリーズシャフト作動角の増加分が予め定めた角度以上となるまで、レリーズシャフト作動角が実質的なクラッチ切断位置であるタッチポイントTPを維持するように、モータ出力を保持する。これにより、マニュアル操作の介入後にクラッチレバー4bが急に解放された場合にもエンストの発生を抑止する。 【0089】 このように、クラッチ装置26の状況に応じて、荷重(電流)制御と位置(角度)制御とを使い分けることで、より細やかなクラッチ制御(クラッチ装置26の状態や特性に応じた最適な制御)を行うことが可能となる。 実施形態では、レリーズシャフト作動角(減速機構51のギヤ軸の回転角)を検出し、予め設定した(又は学習した)タッチポイントTPまでの領域(半クラッチ領域B)では、電流値の重み付けを増した制御とし、タッチポイントTP以降の領域(クラッチ切断領域C)では、作動角の重み付けを増した制御とした。 また、実施形態では、レリーズシャフト作動角に対するモータ52の電流値(トルク値に換算)の変化を、予め定めたタイミングで学習(更新)し、クラッチ装置26の状況に応じた目標値を設定する。この目標値とECU40の電流センサ40bの検出値とに基づき、モータ52の駆動がフィードバック制御される。 【0090】 <発進制御> 次に、実施形態の自動二輪車1の発進制御について説明する。 図14は自動二輪車1の停車状態からの発進時における車速Vとエンジン回転数Neとの相関を示すグラフである。図中線Ne0は、車速Vとエンジン回転数Neとの比例関係を示す相関線(直線)である。この相関線Ne0の傾きは、変速機21の減速比に相当し、変速段によって異なる。図中領域Ne1は、自動二輪車1が車速0の停車状態から発進する際に、目標エンジン回転数Ne2(又はNe4)を維持するための半クラッチ領域を示す。 【0091】 目標エンジン回転数Ne2は、変速段のレシオとスロットル開度とに基づき設定されるクラッチミート回転数である。目標エンジン回転数Ne2は、運転者の加速要求(スロットル開度)に応じて変動(増減)する。例えば1速(ローギヤ)での発進時には、スロットル開度θth=10degに対して目標エンジン回転数Ne2=2000rpmとなる。 【0092】 半クラッチ領域Ne1は、目標エンジン回転数Ne2が相関線Ne0上のエンジン回転数よりも高い範囲にある。実施形態のクラッチ接続制御(発進制御)では、半クラッチ領域Ne1を設けて目標エンジン回転数Ne2を維持するようにクラッチ容量を制御する。これにより、発進時におけるエンストや吹け上がりを抑えながら、スロットル開度θth(および後述する走行モード)に応じた発進加速を可能とする。 【0093】 ここで、自動二輪車1は、複数の走行モードを有している。自動二輪車1の走行モードは、ノーマルモードとスポーツモードとを含む。 図3を併せて参照し、ノーマルモードとスポーツモードとは、例えば点火装置47、燃料噴射装置48およびクラッチアクチュエータ50の各制御を異なるものとする。例えば、スポーツモードは、ノーマルモードに対して車両の高い加速が求められており、全体的に高めのエンジン回転数Neを使用する。スポーツモードでの発進時において、前記目標エンジン回転数Ne2に追加エンジン回転数Ne3が加算され、スポーツモードで高加速用の目標エンジン回転数Ne4が適用される。また、前記追加エンジン回転数Ne3は、スロットルオープン速度により変更可能となる。走行モードの切り替えは、例えば運転者が走行モード切替スイッチ45(図3参照)を操作することでなされる。 【0094】 図15はスロットルオープン速度Δθthと追加エンジン回転数Ne3との相関を示すグラフである。スロットルオープン速度Δθthは、運転者によるスロットルグリップの開操作速度に相当する。 スポーツモードにおいて、スロットルオープン速度Δθthが閾値a以下の場合には、運転者の加速要求が標準範囲にあるものとして、追加エンジン回転数Ne3は予め設定された標準値Xとなる。前記標準値Xは、仮で1000rpmとするが、エンジン形式、車両毎に変更可能である。 【0095】 スポーツモードにおいて、スロットルオープン速度Δθthが速い場合(スロットルオープン速度Δθthが閾値aを越える場合)には、運転者の加速要求が高いものとして、目標エンジン回転数Ne2に以下の追加エンジン回転数Ne3が加算され(目標エンジン回転数追加制御)、スポーツモード用の目標エンジン回転数Ne4が設定される。この目標エンジン回転数Ne4を維持するようにクラッチアクチュエータ50が制御されて、スポーツモードとして高加速の発進制御がなされる。 【0096】 追加エンジン回転数Ne3は、スロットルオープン速度Δθthが閾値aを越えると、スロットルオープン速度Δθthの増加に伴い比例的に増加する。目標エンジン回転数Ne2およびNe4は、追加エンジン回転数Ne3を加算した場合でも、エンジン13の最高出力時の回転数(Psmax)を上限とする。スポーツモードでの発進時には、トラクションコントロール等で後輪12のスリップを抑えつつ、高いエンジン回転数Ne4で良好な発進加速を得る。 また、ウイリー抑制システムが搭載された車両においては、追加エンジン回転数Ne3(rpm)の上限値は、ウイリー抑制システムが作動するエンジン回転数までとする。 【0097】 例えば追加エンジン回転数Ne3は、以下の式(1)で算出される。 追加エンジン回転数Ne3(rpm)=10*スロットルオープン速度Δθth(deg/sec)···(1) なお、スロットルオープン速度Δθth>100とする。 【0098】 以下、前記目標エンジン回転数追加制御を含む処理について図16のフローチャートを参照して説明する。この処理は、電源がON(自動二輪車1のメインスイッチがON)の場合に所定の周期で繰り返し実行される。 まず、ステップS1において、現在の走行モードがスポーツモードであるか否かを判定する。ステップS1でYES(スポーツモードである)の場合、ステップS2に移行する。ステップS1でNO(スポーツモードでない)の場合、一旦処理を終了する。 【0099】 ステップS2では、スロットルオープン速度Δθthに対応する追加エンジン回転数Ne3を、図15に相当するテーブルを参照して求める。その後、ステップS3に移行し、スポーツモードの目標エンジン回転数Ne4を初期値(目標エンジン回転数Ne2)+追加エンジン回転数Ne3で算出する。その後、ステップS4に移行し、ステップS3で求めた目標エンジン回転数Ne4を維持するようにクラッチ容量を制御して、自動二輪車1を発進させる。 【0100】 以上説明したように、上記実施形態におけるクラッチ制御装置40Aは、エンジン13と変速機21との間の動力伝達を断接するクラッチ装置26と、前記クラッチ装置26を作動させるための駆動力を出力するクラッチアクチュエータ50と、前記クラッチアクチュエータ50を駆動制御するECU40と、を備えるクラッチ制御装置40Aにおいて、当該クラッチ制御装置40Aを搭載する自動二輪車1の発進時、前記エンジン13の回転数に応じて、前記クラッチ装置26を接続する発進制御がなされ、前記発進制御を行う際の前記エンジン13の発進回転数Ne2,Ne4は、前記自動二輪車1における切替可能な走行モードに応じて複数設定されている。 この構成によれば、自動二輪車1の走行モードに応じてクラッチ装置26の発進制御を行う際のエンジン回転数(発進回転数Ne2,Ne4)が複数設定されているので、運転者が選択した走行モードに応じて異なる特性で自動二輪車1を発進させることができる。 【0101】 また、上記クラッチ制御装置40Aにおいて、前記自動二輪車1の走行モードは、ノーマルモードと、前記ノーマルモードに対してクラッチ接続時のエンジン回転数を高めることで加速を強めたスポーツモードと、があり、前記ノーマルモードおよび前記スポーツモードの各々に応じて、前記発進回転数Ne2,Ne4が設定され、前記スポーツモードの発進回転数Ne4は、前記ノーマルモードの発進回転数Ne2よりも高い。 この構成によれば、スポーツモードでの発進時に、ノーマルモードの発進回転数Ne2よりも高回転の発進回転数Ne4を用いることで、スポーツモードでの加速要求に応じた発進制御を行うことができる。 【0102】 また、上記クラッチ制御装置40Aにおいて、前記スポーツモードの発進回転数Ne4は、前記ノーマルモードの発進回転数Ne2に追加回転数Ne3を加算した値であり、前記追加回転数Ne3は、スロットルオープン速度Δθthに応じて決定される。 この構成によれば、運転者の操作方法(スロットルオープン速度Δθth)によって意図的に発進回転数を調整することができる。 【0103】 また、上記クラッチ制御装置40Aにおいて、前記追加回転数Ne3は、前記スロットルオープン速度Δθthが予め定めた閾値a以下の場合は標準値Xが加算され、前記スロットルオープン速度Δθthが前記閾値aを越えた場合には、前記標準値Xからさらに追加分が増加した値が加算される。 この構成によれば、スポーツモードにおいても、運転者の操作によって加速力を調整することができる。 【0104】 また、上記クラッチ制御装置40Aにおいて、前記追加回転数Ne3は、前記スロットルオープン速度Δθthの増加に応じて増加する。 この構成によれば、スロットオープン速度Δθthの増加に応じて追加回転数Ne3ひいては発進回転数Ne4が増加するので、運転者の加速要求に応じた発進特性を得ることができる。 【0105】 なお、本発明は上記実施例に限られるものではなく、例えば、クラッチ操作子は、クラッチレバー4bに限らず、クラッチペダルやその他の種々操作子であってもよい。クラッチ装置は、エンジンと変速機との間に配置されるものに限らず、原動機と変速機以外の任意の出力対象との間に配置されるものでもよい。原動機は内燃機関に限らず電気モータであってもよい。 上記実施形態のようにクラッチ操作を自動化した鞍乗り型車両への適用に限らず、マニュアルクラッチ操作を基本としながら、所定の条件下でマニュアルクラッチ操作を行わずに駆動力を調整して変速を可能とする、いわゆるクラッチ操作レスの変速装置を備える鞍乗り型車両にも適用可能である。 また、前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両も含まれ、かつ電気モータを原動機に含む車両も含まれる。 そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。 【符号の説明】 【0106】 1 自動二輪車(鞍乗り型車両) 13 エンジン(原動機) 21 変速機(出力対象) 26 クラッチ装置 40 ECU(制御部) 40A クラッチ制御装置 50 クラッチアクチュエータ a 閾値 Ne2,Ne4 発進回転数 Ne3 追加回転数 Δθth スロットルオープン速度
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